STORM(ストーム)の中でも、日本のボウラーから長く支持されている「フィジックス」シリーズ。
その歴代モデルの中でも、特に印象に残っているボウラーが多いのではないかと思うのが、
「フィジックス・パワーエリート(PHYSIX POWER ELITE)」
です。
鮮やかなレッドカラー。
フィジックスシリーズを象徴するアトミックコア。
そしてカバーストックには「NeXパールリアクティブ」。
さらに、日本限定モデルとして登場した特別感もあります。
筆者はフィジックス・パワーエリートを実際に投げた経験があります。
だからこそ今回の記事では、メーカー公表スペックを紹介するだけではなく、
「なぜパワーエリートは高く評価されたのか?」
「NeXパールとアトミックコアを組み合わせる意味は何なのか?」
「フィジックスシリーズの中でどんな存在だったのか?」
という部分まで掘り下げていきます。
フィジックス・パワーエリートとは?
フィジックス・パワーエリートは、2020年10月に発売されたSTORMのボウリングボールです。
ハイスポーツ創立50周年を記念して開発された日本限定モデルで、1980年代に人気を集めた国産ウレタンボール「パワーエリート」の名前を受け継いでいます。
もちろん、昔のパワーエリートをそのまま復刻したボールではありません。
中身は完全に現代のハイパフォーマンスボールです。
カバーストックには、
NeXパールリアクティブ
を採用。
コアには、
アトミックコア
を搭載しています。
フィジックスシリーズの強力なコアに、NeXパールという強めのパールカバーを組み合わせたところが、このボール最大の特徴です。
フィジックス・パワーエリートのスペック
| 項目 | スペック |
| メーカー | STORM(ストーム) |
| ボール名 | フィジックス・パワーエリート |
| カバーストック | NeXパールリアクティブ |
| コア | アトミックコア |
| コアタイプ | 非対称 |
| RG | 2.480(15ポンド) |
| ΔRG | 0.053(15ポンド) |
| マスバイアス差 | 0.017(15ポンド) |
| フレア | 6インチ以上 |
| 表面仕上げ | 1500グリットポリッシュ |
| カラー | レッド |
| 重量 | 12〜16ポンド |
| フレグランス | ペパーミント |
| 適性コンディション | ミディアム〜ミディアムヘビー |
| 発売 | 2020年10月 |
スペックを見ると、
RG:2.480
ΔRG:0.053
マスバイアス差:0.017
となっています。
フレアは6インチ以上。
現在でもフィジックスシリーズでおなじみのアトミックコアですが、改めて数字を見るとかなり存在感のあるコアです。
そして、その強力なコアへNeXパールを組み合わせています。
この、
「強いパールカバー×強い非対称コア」
という構成がパワーエリートを理解する重要なポイントです。
NeXパールリアクティブとは?
フィジックス・パワーエリート最大の特徴のひとつが、
NeXパールリアクティブ
です。
NeXは「Nano Extreme」の略で、STORMの中でもミッドレーンでしっかりと摩擦を作ることを意識した強いカバーストックです。
ここで重要なのが、
「パール=弱いカバー」ではない
ということ。
パールリアクティブという言葉だけを見ると、
「手前を走って奥でキレるボール」
というイメージを持つかもしれません。
しかしパワーエリートに採用されているのはNeXパール。
単純に走りだけを求めたパールとは少し考え方が違います。
レーン手前ではスムーズな直進性を作りながら、中盤ではしっかりとレーンを捉え、そこからストロングアーク状の曲がりへつなげる。
このバランスが、パワーエリートの特徴です。
アトミックコアを搭載
コアには、フィジックスシリーズを代表する「アトミックコア」が搭載されています。
15ポンドでは、
RG:2.480
ΔRG:0.053
マスバイアス差:0.017
です。
アトミックコアは、重量を中心付近へ集めた設計によって強い回転を作り、大きなフレアを生み出す非対称コアです。
筆者がフィジックスシリーズを見るとき、カバーストックと同じくらい重要だと思っているのが、このアトミックコアです。
フィジックスはモデルごとにカバーが変わります。
それでも「フィジックスらしさ」を感じるモデルが多い。
その理由のひとつが、アトミックコアにあるのではないかと思っています。
1500グリットポリッシュ仕上げ
フィジックス・パワーエリートの表面仕上げは、
1500グリットポリッシュ
です。
NeXパール+ポリッシュ。
この組み合わせによって、強いカバーを搭載しながらレーン手前の直進性も確保しています。
もしNeXという強いカバーを粗い表面のまま使用すれば、さらに手前から摩擦を作る方向へボールモーションが変化する可能性があります。
しかしパワーエリートでは、ポリッシュによって手前での余計なエネルギー消費を抑える。
そして中盤からアトミックコアを使って転がりを作り、ブレークポイントからストロングアーク状に曲げていく。
筆者としては、
カバーの強さを活かしながら、強すぎる部分を表面仕上げでバランスさせている
ところが面白いと感じます。
パワーエリートは「走ってキレるパール」なのか?
パールボールというと、
「走ってキレる」
という表現がよく使われます。
しかし、フィジックス・パワーエリートをそれだけで説明するのは少し違うと思います。
メーカーが示している方向性は、
ストロングアーク。
つまり、ブレークポイントへ到達してから急激に方向転換することだけを狙ったボールではありません。
NeXパールによって適度な直進性を作る。
中盤からアトミックコアによって転がりを作る。
そしてブレークポイントから大きく力強い弧を描く。
筆者としては、
「走り」と「転がり」と「曲がり」が分断されずにつながっていること
が、パワーエリートの魅力を考えるうえで重要だと思います。
筆者の考察|パワーエリートの魅力は「強いのに扱いやすい」ことでは?
筆者はフィジックス・パワーエリートを実際に投げた経験があります。
その経験も踏まえながら、改めてメーカー公表スペックを見て感じるのが、
パワーエリートは単純に「強いボール」だから評価されたわけではないのではないか
ということです。
NeXパール。
アトミックコア。
ΔRG0.053。
6インチ以上のフレア。
スペックだけを並べれば、かなり強そうに見えます。
しかしメーカーがこのボールで重視したのは、攻撃的な動きだけではなく「安定性」です。
筆者も、ここがパワーエリートを考えるうえで非常に重要だと思っています。
強いけれど、ただ暴れるわけではない。
走るけれど、単純に滑っているわけではない。
奥で動くけれど、ブレークポイントで急激に向きを変えるだけではない。
高い性能を、実際のスコアメイクにつなげやすい形へまとめたこと。
それがパワーエリートの魅力なのではないでしょうか。
「強いボール=大きく曲がる」ではない
パワーエリートを考えるうえで、もうひとつ重要だと思うことがあります。
それは、
「強いボール=何枚も大きく曲がるボール」ではない
ということです。
ボールの強さには、
・オイルへの対応力
・中盤での摩擦
・転がりの強さ
・フレア量
・ブレークポイントでの反応
・ピンまでのエネルギー維持
など、さまざまな要素があります。
パワーエリートの場合、NeXパールによってオイルへの対応力を確保しながら、アトミックコアによって転がりを作ります。
そのため筆者としては、
「何枚曲がったか」
だけではなく、
「どこから転がり、どんな形でポケットへ向かうか」
を見るべきボールだと思っています。
「走る」と「滑る」も違う
もうひとつ区別したいのが、
「走る」と「滑る」の違い。
です。
レーン手前でエネルギーを使わず、必要な場所まで進む。
そして中盤からしっかり転がり始め、ブレークポイントで向きを変える。
これは良い意味での「走り」です。
一方プロボウラーからの評価も非常に高かったオイル上でグリップできず、必要な場所でもボールが立ち上がらない。
これは単純に「滑っている」可能性があります。
パワーエリートはNeXパールとアトミックコアを組み合わせることで、
直進性を作りながら、必要なところではしっかりボールを働かせる
ことを狙ったモデルだと考えられます。
プロボウラーからの評価も非常に高かった
フィジックス・パワーエリートは、発売当時のプロボウラーからも非常に高く評価されています。
ハイスポーツが契約プロ69名を対象に実施した「2020年7月〜12月発売ボール」のお気に入りランキングでは、
フィジックス・パワーエリートが1位を獲得しています。
これはかなり興味深い結果です。
プロからは、
・NeXパールのキャッチ力
・アトミックコアによるピンアクション
・走りと転がりのバランス
・安定感
・扱いやすさ
といった部分が評価されています。
単純に「曲がるから人気だった」というより、
強さと扱いやすさのバランス
が評価につながったと考えるほうが自然でしょう。
なぜパワーエリートシリーズは続いたのか?
初代フィジックス・パワーエリートのあとには、
パワーエリート・ブルー。
パワーエリート・プロモデル。
さらに後継のパワーエリートシリーズが登場しています。
シリーズが続いていること自体、初代のコンセプトが支持された証拠のひとつと考えられます。
ただし、後継モデルは単純な色違いではありません。
例えばブルーではR3Sパール。
プロモデルではNRG プロ パール。
モデルごとにカバーストックを変えることで、アトミックコアを活かしながら異なる役割を持たせています。
だからこそ、
「パワーエリートシリーズでどれが一番強いか?」
だけで比較するより、
「どのコンディションを担当させるモデルなのか?」
で考えるほうが分かりやすいと思います。
プロモデルとの違い
フィジックス・パワーエリート・プロモデルと混同しないように注意したいところです。
初代パワーエリートは、
NeXパールリアクティブ。
プロモデルは、
NRG プロ パール リアクティブ。
です。
コアはどちらもアトミックコアで、15ポンドのRG、ΔRG、マスバイアス差も共通しています。
つまり大きな違いを生み出しているのがカバーストックです。
同じアトミックコアでも、外側のカバーを変更すればボールモーションは変化します。
初代とプロモデルを比較すると、
「コアが同じなら同じように動く」とは限らない
ことがよく分かります。
ミディアム〜ミディアムヘビーで使いたいボール
メーカー公表の適性コンディションは、
ミディアム〜ミディアムヘビー。
です。
NeXという強いカバーを使用しているものの、パール+ポリッシュによって直進性も作っています。
そのため、
「ヘビーオイル専用のフィジックス」
と考えるのは少し違います。
ある程度オイル量は欲しい。
しかし強いソリッドほど早く反応させたくない。
そんな場面で使うことを考えたいボールです。
レーン変化にも対応しやすい理由
パワーエリートについてメーカーが重視していたのが、
長い時間使用できること。
です。
ボウリングではゲームが進むとレーンが変化します。
最初はオイルがあった場所も、投球を重ねれば削れていきます。
そのたびに極端にボールリアクションが変化すると、ライン変更やボールチェンジが難しくなります。
パワーエリートは、攻撃的なバックエンドだけではなく安定性も重視した設計です。
この考え方は、競技でスコアをまとめるうえで非常に重要だと思います。
球速が速いボウラーにも興味深い
球速が速いボウラーの場合、弱いパールではオイル上で滑りすぎることがあります。
その点、パワーエリートはNeXパール。
カバー自体に十分な強さがあります。
さらにアトミックコアによって転がりを作る。
そのため、
「走りは欲しいけれど、弱いパールでは頼りない」
というスピード優位のボウラーにも興味深い選択肢です。
回転数が多いボウラーにも面白い
反対に回転数が多いボウラーの場合、強いソリッドでは手前から噛みすぎることがあります。
そこでパール+ポリッシュによって直進性を確保する。
ただしカバーそのものはNeXなので、必要なところではレーンを捉える。
この組み合わせは、
強さを残しながら手前を楽にしたい
という場面で面白いと思います。
もちろん、実際の適性は球速とのバランスやレイアウトによっても変わります。
どんなボウラーに向いている?
フィジックス・パワーエリートは、
・フィジックスシリーズが好きな人
・アトミックコアが好きな人
・ミディアム〜ミディアムヘビーを中心に投げる人
・弱いパールではオイル上で頼りなく感じる人
・強いソリッドでは手前から噛みすぎる人
・走りと転がりを両立したい人
・ストロングアーク系のボールモーションが好きな人
・フレッシュからある程度長く使えるボールを探している人
・パールでも安定感を重視したい人
などに注目してほしいボールです。
ただしボールリアクションは、球速、回転数、回転軸、PAP、レイアウト、表面状態、レーンコンディションによって変化します。
同じパワーエリートでも、誰が投げても同じ動きになるわけではありません。
逆に向いていない可能性がある場面
一方、
・かなりドライなレーン
・ライトオイル中心
・弱いボールを探している
・バックエンドで極端に鋭いスキッド・スナップを求めている
・ヘビーオイルでソリッド並みの早いトラクションが必要
という場合には、別のボールのほうが目的に合う可能性があります。
パワーエリートは高性能ですが、
高性能=どんなコンディションでも使える
という意味ではありません。
ボールにはそれぞれ役割があります。
筆者がパワーエリートで注目しているポイント
筆者はフィジックス・パワーエリートを実際に投げた経験があります。
そのうえで、このボールを改めて振り返るときに注目したいのは、
NeXパールとアトミックコアのバランス
です。
単純に「よく曲がるボールだった」で終わらせるより、
「なぜ、このボールは評価されたのか?」
まで考えるほうが面白いと思います。
強いNeXパール。
1500グリットポリッシュによる直進性。
大きなフレアを生み出すアトミックコア。
そしてメーカーが重視したストロングアークと安定性。
それぞれの要素が単独で存在するのではなく、
ひとつのボールモーションとしてバランスよくまとまっていること。
そこがパワーエリートというボールの完成度につながったのではないかと筆者は考えています。
実際に投げた経験があるからこそ伝えたいこと
筆者はパワーエリートを実際に投げています。
しかし、ボウリングボールの評価は「自分が投げて良かった・悪かった」だけで決められるものではありません。
投げる人の球速。
回転数。
回転軸。
レイアウト。
使用しているボウリング場。
そしてオイルコンディション。
これらが変われば、同じボールでも感じ方は変わります。
だからこそ当ブログでは、
実投経験だけに頼るのではなく、メーカー公表スペックと照らし合わせながらボールの特徴を考えること
を大切にしています。
「筆者が使いやすかったから全員におすすめ」
という紹介ではなく、
どんな設計で、どんな役割を持ったボールなのか。
そこまで理解したうえで、自分に合うかを判断することが大切だと思います。
まとめ
フィジックス・パワーエリートは「強さと安定感」を両立した名作フィジックス
フィジックス・パワーエリートの特徴をまとめると、
・NeXパールリアクティブ
・アトミックコア
・RG2.480(15ポンド)
・ΔRG0.053(15ポンド)
・マスバイアス差0.017(15ポンド)
・フレア6インチ以上
・1500グリットポリッシュ
・日本限定モデル
・2020年10月発売
・ミディアム〜ミディアムヘビー向け
となっています。
筆者がこのボールで特に注目したいのは、
「強いパールなのに、攻撃的な動きだけを狙っていないこと」
です。
NeXパールでオイルへの対応力を確保する。
ポリッシュによってレーン手前の直進性を作る。
アトミックコアによって中盤から強い転がりを作る。
そしてブレークポイントからストロングアーク状にポケットへ向かう。
走り。
転がり。
曲がり。
安定感。
そのバランスを高いレベルでまとめることを狙ったからこそ、発売当時に多くのプロや一般ボウラーから支持されたのではないでしょうか。
筆者自身も実際に投げた経験があるボールだからこそ、スペックを改めて確認すると、この組み合わせの面白さを感じます。
ボウリングボールは、
「一番曲がるボールが一番良いボール」ではありません。
必要な場所まで進み、必要な場所から転がり、予測しやすい形でポケットへ向かう。
フィジックス・パワーエリートは、
「強さをスコアにつなげるための安定感」
まで考えて作られた、フィジックスシリーズを代表する一球だと思います。



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