STORM(ストーム)の中でも、長年高い人気を誇る「フェイズ」シリーズ。
その中でも個人的に面白い存在だと思っているのが、
「フェイズIII(PHAZE III)」
です。
フェイズIIIには、シリーズを象徴する「ベロシティコア」を搭載。
カバーストックには、
R3Sハイブリッドリアクティブ
が採用されています。
フェイズIIのような安定感を重視したモデルとも違う。
かといって、単純に奥で激しくキレるだけのボールでもない。
筆者もフェイズIIIを実際に投げた経験がありますが、このボールを改めてスペックから見直してみると、
「走りとコントロール性のバランス」
が非常に重要なモデルだったのではないかと感じます。
今回は筆者自身の実投経験も踏まえながら、
「フェイズIIIはどんなボールなのか?」
「フェイズIIとは何が違うのか?」
「R3Sハイブリッドとベロシティコアの組み合わせにはどんな意味があるのか?」
「どんなコンディションで使いやすいのか?」
について詳しく解説していきます。
フェイズIIIとは?
フェイズIIIは、STORMから2019年12月に発売されたフェイズシリーズのボウリングボールです。
カバーストックには、
R3Sハイブリッドリアクティブ
を採用。
コアにはフェイズシリーズを代表する、
ベロシティコア
が搭載されています。
フェイズIIIの大きな特徴は、ハイスポーツが、
フェイズIIとフェイズスターの間にフィットするモデル
として位置づけていることです。
フェイズIIの安定したアーク状の動き。
そこへ、よりレーン手前の直進性とバックエンドの動きを加える。
このバランスを狙ったのがフェイズIIIです。
フェイズIIIのスペック
| 項目 | スペック |
| メーカー | STORM(ストーム) |
| ボール名 | フェイズIII |
| 英語表記 | PHAZE III |
| カバーストック | R3Sハイブリッドリアクティブ |
| コア | ベロシティコア |
| コアタイプ | 対称コア |
| RG | 2.480(15ポンド) |
| ΔRG | 0.051(15ポンド) |
| マスバイアス差 | N/A |
| フレア | 5〜6インチ |
| 硬度 | 73〜75 |
| 表面仕上げ | 1500グリット・ポリッシュ |
| カラー | オブシディアン/ジェイド/オーキッド |
| 重量 | 12〜16ポンド |
| フレグランス | グレープバイン |
| 適性コンディション | ミディアム |
| 発売 | 2019年12月 |
15ポンドでは、
RG:2.480
ΔRG:0.051
となっています。
対称コアでありながらΔRGは比較的大きく、フレアも5〜6インチ。
つまり、
しっかり転がりながらフレアも作れる対称コア
です。
そこへR3Sハイブリッドと1500グリット・ポリッシュを組み合わせています。
フェイズIIIを支える「ベロシティコア」
フェイズシリーズを語るうえで外せないのが、
ベロシティコア
です。
フェイズIIIだけのコアではなく、フェイズシリーズを代表する存在と言っていいでしょう。
15ポンドでRG2.480。
ΔRG0.051。
低めのRGによって比較的早い段階から転がりを作りながら、大きめのΔRGによって十分なフレアも生み出す設計です。
そして重要なのが、
対称コア
であること。
非対称コア特有の強烈な方向転換を狙うというより、転がりと継続性を活かしてレーンを攻略する。
これがフェイズシリーズの扱いやすさにつながっていると筆者は考えています。
対称コアだから弱いわけではない
ボウリングボールを選ぶとき、
「非対称コア=強い」
「対称コア=弱い」
というイメージを持つことがあります。
しかし、これは少し単純化しすぎています。
フェイズIIIは対称コアですが、
RG2.480。
ΔRG0.051。
フレア5〜6インチ。
十分に存在感のある数値です。
つまり、
対称だから曲がらないのではなく、曲がり方の性格が違う。
と考えたほうが分かりやすいでしょう。
フェイズIIIでは、このベロシティコアによる転がりとR3Sハイブリッドの直進性を組み合わせています。
R3Sハイブリッドリアクティブを採用
フェイズIII最大の特徴のひとつが、
R3Sハイブリッドリアクティブ
です。
フェイズIIIではシリーズで初めてR3Sハイブリッドが採用されました。
ハイブリッドは一般的に、ソリッドとパールそれぞれの特徴を組み合わせたカバーストックです。
しかし、
「ハイブリッドだから必ず中間の動きになる」
と単純に考えるのはおすすめしません。
カバーだけではなく、
表面仕上げ。
コア。
RG。
ΔRG。
そしてレイアウト。
これらによってボールモーションは変わるからです。
フェイズIIIの場合はR3Sハイブリッドに、
1500グリット・ポリッシュ
を組み合わせています。
この仕上げが、フェイズIIIの「走り」を考えるうえで重要です。
1500グリット・ポリッシュによる直進性
フェイズIIIの工場出荷時仕上げは、
1500グリット・ポリッシュ。
現在はリアクタグロスやPower Edgeなど別の光沢仕上げもありますが、フェイズIIIが発売された当時は1500グリット・ポリッシュが採用されていました。
この仕上げによって、レーン手前で必要以上に摩擦を起こすことを抑えています。
R3Sハイブリッド。
1500グリット・ポリッシュ。
ベロシティコア。
つまり、
カバーと表面である程度走らせながら、低RGのベロシティコアで転がりを作る。
この役割分担がフェイズIIIの面白いところです。
フェイズIIIは「走ってキレる」だけではない
メーカーもフェイズIIIについて、フェイズIIより走りとバックエンドを意識したモデルとして説明しています。
ただ、筆者としてはフェイズIIIを、
「走ってキレるボール」
だけで終わらせたくありません。
なぜなら内部にはベロシティコアが入っているからです。
低RGで転がりが強く、大きなΔRGを持つ対称コア。
そのため、
手前を走る。
↓
中盤で転がる。
↓
ブレークポイントからストロングアーク状に向きを変える。
という流れを作ることが、フェイズIIIの大きな特徴だと考えています。
筆者の考察|フェイズIIIの魅力は「走りと転がりを両立していること」
筆者はフェイズIIIを実際に投げた経験があります。
そのうえで改めてスペックを見ると、フェイズIIIの魅力は、
「走るのに、ボールの存在感がなくならない」
という部分にあると思っています。
単純に走るだけのボールなら、もっと弱いカバーや高RGのコアを使う方法もあります。
しかしフェイズIIIは違います。
R3Sハイブリッドとポリッシュによって手前の直進性を作る。
その一方で、内部には低RGのベロシティコアを入れる。
つまり、
外側では走行距離を作り、内側では転がりを作る。
このバランスがフェイズIIIらしさにつながっているのではないでしょうか。
「走る」と「滑る」は同じではない
フェイズIIIのようなボールを評価するとき、筆者が重要だと思っているのが、
「走る」と「滑る」を区別すること
です。
ボールがオイル上を長く進めば、すべて「走っている」というわけではありません。
カバーがオイルに負けているだけなら、ブレークポイントへ到達しても十分な方向転換ができない場合があります。
理想的なのは、
手前では余計な摩擦を起こさない。
中盤では転がりを作る。
ブレークポイントではしっかり向きを変える。
そしてピンへ向かって曲がり続ける。
フェイズIIIは、
1500グリット・ポリッシュで走らせながら、ベロシティコアによって転がりを失わない。
この組み合わせが重要だと思います。
実際に投げた経験があるからこそ感じること
筆者はフェイズIIIを実際に投げたことがあります。
ただし、ボウリングボールのリアクションは、
球速。
回転数。
回転軸。
PAP。
レイアウト。
表面状態。
そしてオイルコンディション。
これらによって大きく変わります。
そのため、
「筆者が投げたらこうだったから、誰が投げても同じ」
とは考えていません。
むしろ実際に投げた経験があるからこそ、スペックだけで、
「絶対にキレる」
「絶対に使いやすい」
と断定することには慎重でありたいと思っています。
フェイズIIIについて筆者が評価したいのは、
R3Sハイブリッドとベロシティコアによって、走り・転がり・バックエンドのバランスを狙った設計そのもの。
です。
フェイズIIとの違いは?
フェイズIIIを検討するなら、やはり気になるのが、
フェイズIIとの違い
でしょう。
フェイズIIはシリーズを代表するモデルのひとつで、TX-16ソリッドリアクティブを採用しています。
一方、フェイズIIIは、
R3Sハイブリッドリアクティブ。
さらに1500グリット・ポリッシュ仕上げです。
両モデルともベロシティコアを搭載しているため、コアから生まれる基本的な転がりには共通点があります。
大きな違いは、
カバーと表面仕上げ。
フェイズIIはソリッドらしい安定感。
フェイズIIIは、より手前の直進性とダウンレーンの動きを意識した設計。
同じベロシティコアでも、カバーを変えることで役割を分けています。
「フェイズIIより上」ではなく「役割が違う」
フェイズIIIという名前を見ると、
「IIの次だからIIIのほうが高性能なのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
しかしボウリングボールの場合、
新しい=上位互換
とは限りません。
フェイズIIが必要なコンディションもあります。
フェイズIIIが必要なコンディションもあります。
フェイズIIでは手前から少し早い。
でも弱いパールへ変更するとオイル部分で不安。
そんなときに、
フェイズIIIのようなハイブリッド+ポリッシュ
という選択肢が生きてきます。
シリーズを「強い・弱い」だけで見るのではなく、
どこで使うボールなのか
という視点で考えることが重要です。
フェイズスターとの間を埋める存在
メーカーはフェイズIIIについて、
フェイズIIとフェイズスターの間
に位置するモデルとして説明しています。
これもフェイズIIIを理解するうえで非常に重要です。
ソリッド寄りの安定感だけを追求するわけではない。
しかし、走りだけを追求するわけでもない。
その中間で、
適度な直進性+ストロングアーク状のバックエンド
を狙う。
フェイズIIIが「万能性の高いフェイズ」と評価された理由のひとつだと思います。
ストロングアークという曲がり方
フェイズIIIの公式説明で使われているのが、
「ストロングアーク」
という表現です。
これはフェイズIIIを考えるうえで重要なキーワードです。
奥で一瞬だけ鋭く向きを変えるというより、
ブレークポイントから強い弧を描きながら曲がり続ける。
このタイプのボールモーションは、レーン変化への対応でもメリットがあります。
バックエンドが鋭すぎるボールでは、外側のドライへ触れた瞬間に大きく反応してしまうことがあります。
一方でフェイズIIIは、ベロシティコアによる継続性を活かしながら曲がる。
そのため、
「奥で動くけれど、動きが一瞬で終わらない」
という方向性が期待できます。
ミディアムコンディションで使いやすい
メーカーが示している適性は、
ミディアム。
です。
これはフェイズIIIの構成を見ると納得できます。
R3Sハイブリッド。
1500グリット・ポリッシュ。
ベロシティコア。
強いソリッドほど手前から噛ませない。
しかし弱いパールほどオイル上で不安になりにくい。
筆者としては、
ある程度オイルがありながら、レーン手前の直進性も必要な場面
で選択肢に入れやすいボールだと考えています。
レーン変化への対応力にも注目
フェイズIIIで特に注目したいのが、
レーンが変化し始めたタイミング
です。
ゲーム序盤に強めのソリッドを使用していた。
しかし投球数が増えて手前が削れてきた。
ボールが少し早く感じる。
でも弱いボールへ変更するほどレーン全体が遅くなったわけではない。
そんなときに、
手前を走らせながら中盤以降の転がりを残せるボール
が必要になります。
フェイズIIIは、このような場面で役割を作りやすい設計です。
回転数が多いボウラーにも面白い
メーカーはフェイズIIIについて、回転力が強くバックエンドでコントロールを失いやすいタイプにも適していると説明しています。
これは非常に興味深い部分です。
回転数が多ければ、必ずキレるボールが必要というわけではありません。
むしろ回転数が多いからこそ、
バックエンドの反応が強すぎないボール
が必要になる場合があります。
フェイズIIIは対称のベロシティコア。
そしてストロングアーク系の方向性。
回転数の多いボウラーが、バックエンドの暴れを抑えながら幅を作りたい場合にも検討しやすいモデルだと思います。
どんなボウラーにおすすめ?
フェイズIIIは、
・フェイズシリーズが好きな人
・ベロシティコアが好きな人
・フェイズIIでは少し手前が早いと感じる人
・ミディアムコンディションを中心に投げる人
・手前の走りが欲しい人
・パールほど鋭すぎない動きが欲しい人
・対称コアの扱いやすさが好きな人
・ストロングアーク系の曲がりが好きな人
・レーン変化への対応ボールが欲しい人
・走りと転がりを両立したい人
には興味深い選択肢です。
特に、
「ソリッドでは早い。でも弱いパールへ行くにはまだ早い」
という場面を埋めるボールとして考えると、フェイズIIIの役割が分かりやすくなります。
逆におすすめしにくいケース
フェイズIIIにも得意・不得意があります。
例えば、
・非常にオイル量の多いヘビーコンディション
・手前から最大限のトラクションが必要
・かなりドライなレーン
・ウレタンのような小さな曲がりを求めている
・バックエンドで一気に向きを変える動きだけを求めている
といった場合は、別のボールのほうが目的に合う可能性があります。
万能性が高いことと、
すべてのコンディションで使えること
は同じではありません。
中古でフェイズIIIを購入するなら?
フェイズIIIは2019年発売のモデルなので、現在探す場合は中古品や長期保管品と出会うこともあるでしょう。
その場合は、
・クラックの有無
・プラグ歴
・傷や欠け
・ドリル回数
・表面状態
・オイル抜きや研磨歴
・自分のスパンで再ドリルできるか
などを確認することをおすすめします。
特にフェイズIIIでは、
工場出荷時の1500グリット・ポリッシュから表面が変更されているか
も重要です。
表面状態が変われば、同じフェイズIIIでもボールモーションは変化します。
発売当時のレビューと中古個体の現在のリアクションが必ずしも同じとは限らないことは覚えておきたいところです。
筆者がフェイズIIIを評価する理由
筆者はフェイズIIIを実際に投げた経験があります。
改めてこのボールを振り返ると、
「とにかく曲がる」
「とにかくキレる」
という単純な性能ではなく、
ボール全体のバランス
に魅力があるモデルだと思っています。
R3Sハイブリッド。
1500グリット・ポリッシュ。
ベロシティコア。
それぞれが別々に働くのではなく、
手前の走り→中盤の転がり→バックエンドの継続性
につながるように組み合わされています。
最新ボールには最新ボールの良さがあります。
しかし、ボウリングボールは新しくなれば過去のモデルがすべて不要になるわけではありません。
フェイズIIIのように、
「この組み合わせだから作れたボールモーション」
には、発売から時間が経っても振り返る価値があると思っています。
まとめ
フェイズIIIは「走り・転がり・コントロール」をまとめたフェイズ
フェイズIIIの特徴をまとめると、
・2019年12月発売
・R3Sハイブリッドリアクティブ
・ベロシティコア
・対称コア
・RG2.480(15ポンド)
・ΔRG0.051(15ポンド)
・フレア5〜6インチ
・1500グリット・ポリッシュ
・適性はミディアム
・フェイズIIとフェイズスターの間を狙ったモデル
となっています。
筆者自身も実際にフェイズIIIを投げた経験がありますが、改めてスペックを確認して感じる最大の魅力は、
「走りと転がりのどちらか一方に偏っていないこと」
です。
R3Sハイブリッドと1500グリット・ポリッシュによって手前の直進性を作る。
ベロシティコアによって中盤から転がりを作る。
そしてブレークポイントからストロングアーク状に曲がり続ける。
「走らせる。でも滑らせない。」
このバランスこそ、フェイズIIIの魅力ではないでしょうか。
フェイズIIのようなソリッドでは少し早い。
しかし弱いパールへ変更するにはまだオイルが残っている。
そんな場面で選択肢を作れることもフェイズIIIの強みです。
発売から時間が経った現在でも、
「フェイズIIIはどんなボールだったのか?」
と振り返る価値は十分にあります。
曲がり幅だけでボールを評価するのではなく、
どこを走り、どこから転がり、どのようにピンへ向かうのか。
フェイズIIIは、ボウリングボールを「曲がる・曲がらない」だけで判断しないことの大切さを感じさせてくれる一球だと思います。



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