室伏広治『ゾーンの入り方』レビュー|ボウリングのメンタル強化にも役立つ一冊

本・自己啓発

はじめに

「大事な場面になると、いつもの投球ができない」

ボウリングをしていると、こんな経験はないでしょうか。

練習では普通に投げられていたのに、大会になると身体が固くなる。

ストライクが続いていると、

「次も出したい」

と思った瞬間に力が入る。

パーフェクトが見えてくると、それまで自然にできていたアプローチやリリースまで急に気になってしまう。

技術が突然なくなったわけではありません。

それでも投げられない。

ボウリングを続けていると、技術だけでは説明できない「メンタル」の難しさを感じることがあります。

そんな人に一度読んでみてほしいのが、室伏広治さんの**『ゾーンの入り方』**です。

タイトルだけを見ると、

「読めば簡単にゾーンに入れるようになる本なのかな?」

と思うかもしれません。

しかし、実際のテーマはもっと深いものです。

集中とは何なのか。

どうすれば自分の力を発揮できるのか。

限界とどう向き合うのか。

なぜ「自然体」が重要なのか。

世界のトップで戦ってきた室伏広治さんだからこそ語れる、集中とパフォーマンスについて考えさせられる一冊です。

そして読んでみると、ハンマー投だけではなくボウリングにも通じる部分が非常に多いと感じます。

『ゾーンの入り方』はどんな本?

『ゾーンの入り方』は、元ハンマー投選手の室伏広治さんによる一冊です。

室伏さんといえば、2004年アテネオリンピックの男子ハンマー投で金メダルを獲得した、日本を代表するアスリート。

本書では、世界トップレベルで競技を続けてきた経験などをもとに、

「集中力とは何なのか」

「ゾーンとはどんな状態なのか」

「自分の限界とどう向き合うのか」

「最高のパフォーマンスを発揮するにはどうすればいいのか」

といったテーマが掘り下げられていきます。

構成は、

第1章 究極の集中力をつける

第2章 ゾーンに入る

第3章 限界の超え方

第4章 ゴールへのアプローチを最適化する

第5章 「自然体」が一番強い

第6章 体を整える

となっています。

タイトルには「ゾーン」とありますが、単純な集中テクニックだけを紹介する本ではありません。

身体、目標、トレーニング、考え方などを含めて、

「自分の持っている力をどうすれば本番で発揮できるのか」

を考える本だと私は感じました。

「ゾーン」は無理やり作るものではない

私がこの本のテーマから特に考えさせられたのが、

ゾーンに入ろうとすることと、良い集中状態を作ることは少し違う

ということです。

スポーツをしていると、

「集中しろ!」

と言われることがあります。

自分でも、

「もっと集中しないと」

と思います。

でも不思議なもので、

「集中しよう、集中しよう」

と考えているときほど集中できないことがあります。

ボウリングでも同じです。

「スパットを見なきゃ」

「腕を真っすぐ振らなきゃ」

「親指を早く抜かなきゃ」

「外ミスしないようにしなきゃ」

「ストライクを出さなきゃ」

頭の中がこんな状態では、目の前の投球に集中しているようで、実際にはかなり多くのことを考えています。

反対に、ものすごく調子が良い日はどうでしょうか。

立つ。

スパットを見る。

構える。

投げる。

それだけ。

何も考えていないわけではありません。

でも、余計なことを考えていない。

この違いは非常に大きいと思います。

ボウラーにこそ知ってほしい「自然体」の強さ

『ゾーンの入り方』には「『自然体』が一番強い」という章があります。

この言葉を見たとき、私はボウリングとの相性が非常に良いテーマだと思いました。

ボウリングは力を入れれば入れるほど良いスポーツではありません。

むしろ、

「速いボールを投げよう」

「回転をかけよう」

「絶対ストライクにしよう」

と思ったときに限って力んでしまうことがあります。

肩に力が入る。

スイングが小さくなる。

足が速くなる。

リリースを置きにいく。

そして失投する。

普段なら普通にできることが、意識した途端にできなくなります。

だから、

最高の投球=全力で頑張った投球

とは限らないと思っています。

良い投球ができたとき、

「今のめちゃくちゃ力を入れた!」

というより、

「今のは楽に投げられた」

と感じることのほうが多いのではないでしょうか。

これがスポーツにおける「自然体」を考える面白さだと思います。

「ゾーン」はボウリングでも存在すると思う

私はボウリングにもゾーンに近い状態はあると思っています。

例えばストライクが続いているとき。

1投目。

ストライク。

2投目。

ストライク。

3投目。

ストライク。

最初は特に何も考えていません。

ところが7連続、8連続あたりになってくると状況が変わります。

スコアを見る。

「あと4つか……」

と考える。

9連続。

いよいよパーフェクトが見えてくる。

すると、それまで自然に投げていたのに、

「足はいつものスピードで」

「腕を真っすぐ振って」

「外に出しすぎないで」

「絶対ミスしないように」

と考え始める。

急に投球がぎこちなくなる。

これは非常に興味深い現象だと思います。

それまで身体に任せていたものを、プレッシャーによって頭でコントロールし始めてしまうからです。

だからこそ大事なのは、

「最高の一球を投げよう」としないこと。

1フレーム目に投げたのと同じ一球を投げる。

それだけでいいのかもしれません。

本書を読んで考えたい「集中力」

集中力というと、

一つのことをずっと考え続ける能力

だと思っていました。

でもスポーツでは、少し違うのかもしれません。

特にボウリングは1ゲーム中ずっと集中し続ける必要はありません。

自分の投球が終われば待ち時間があります。

仲間と話すこともあります。

水分補給もします。

レーンコンディションについて考えることもあります。

そして自分の番になったら、

集中する。

投げ終わったら、

一度緩める。

また順番が来たら、

集中する。

この繰り返しです。

つまりボウリングで重要なのは、

「ずっと集中している能力」

より、

「必要な瞬間に集中状態へ切り替える能力」

なのではないでしょうか。

ボウリングなら「ルーティン」が集中のスイッチになる

そこで取り入れたいのがルーティンです。

例えば、

ボールを取る。

立ち位置を確認する。

一度ゆっくり息を吐く。

スパットを見る。

構える。

投げる。

毎回同じ流れにします。

重要なのは、

結果によってルーティンを変えないこと。

ストライクの後でも同じ。

オープンフレームの後でも同じ。

9連続した後でも同じ。

「ここは絶対ストライクが欲しい」

という場面でも同じです。

ルーティンは上手に投げるための儀式ではありません。

私なら、

「いつもの自分に戻るためのスイッチ」

として使いたいと思いました。

ミスショットとの向き合い方も変わる

ボウリングではミスをゼロにはできません。

外ミス。

内ミス。

抜けた。

落とした。

タイミングが合わなかった。

どれだけ練習しても起こります。

問題なのは、ミスそのものより、

その一球を次の一球まで持っていってしまうこと

だと思います。

「またミスした」

「今日はダメだ」

「さっきも内ミスした」

こうなると、次の投球は前の投球に支配されています。

そこで、

「少し足が速かった」

「次はいつものテンポ」

くらいで終わらせる。

必要な情報だけ取ったら、感情は次の投球へ持っていかない。

これも良い集中状態を作るために重要だと思います。

「限界の超え方」というテーマも面白い

本書ではゾーンだけでなく「限界」についても扱われています。

ここもスポーツをしている人には考えさせられるテーマです。

ボウリングでも、

「自分はアベレージ180くらい」

「200はなかなか打てない」

「大会ではどうせ打てない」

と、自分自身で限界を決めてしまうことがあります。

もちろん突然プロレベルになれるわけではありません。

ただ、

自分で設定した限界が成長を止めてしまうことはある

と思います。

昨日できなかったことを練習する。

少しできるようになる。

また新しい課題が見つかる。

その繰り返し。

大きな目標を一気に達成するのではなく、小さな変化を積み重ねていく。

これは競技を続けるうえで大切な考え方だと感じました。

『ゾーンの入り方』はスポーツをしない人にもおすすめ

この本の面白いところは、アスリートだけを対象にした内容ではないことです。

集中力が必要なのはスポーツだけではありません。

仕事。

勉強。

プレゼン。

資格試験。

趣味。

さまざまな場面があります。

「大事な場面になると緊張してしまう」

「集中したいのに他のことを考えてしまう」

「自分の力を本番で発揮できない」

そんな経験がある人なら、スポーツをしていなくても考えるきっかけになると思います。

『ゾーンの入り方』がおすすめな人

この本は特に、

・試合になると緊張してしまう人
・本番で普段の実力を発揮できない人
・集中力を高めたい人
・スポーツのメンタルを強くしたい人
・目標達成について考えたい人
・室伏広治さんの考え方を知りたい人
・仕事や勉強の集中力を高めたい人

におすすめしたい一冊です。

そして個人的には、

ボウリングでメンタルに悩んでいる人にもおすすめしたい本です。

読んだからすぐゾーンに入れるわけではない

ここは勘違いしないほうがいいと思います。

タイトルは『ゾーンの入り方』ですが、

「この方法をやれば5分後にゾーンへ入れます」

という魔法のような本ではありません。

むしろ、

「集中とは何だろう?」

「なぜ本番で力が出せないのだろう?」

「自分にとって自然体とは?」

と考えるための本です。

個人的には、そこが良いと思います。

スポーツのメンタルは、

「緊張しない方法」

を一つ覚えれば解決するほど単純ではありません。

だからこそ、世界トップレベルで戦ってきたアスリートが集中や身体についてどう考えてきたのかを知ること自体に価値があります。

まとめ

ゾーンを追いかけるより「自然体」を作る

『ゾーンの入り方』を通して考えたいのは、

どうすれば無理やりゾーンに入れるのか

だけではありません。

集中力。

身体。

目標。

限界。

そして自然体。

自分の能力を発揮するためには、さまざまな要素が関係しています。

これはボウリングも同じです。

良いボールを買う。

フォームを改善する。

オイルを読む。

スペアを練習する。

もちろん全部大切です。

でも大会の大事な場面で、

「絶対ストライクを出さなきゃ」

と思った瞬間に身体が動かなくなることがあります。

だから私は、

技術を磨くことと同じくらい「自分の力を出せる状態を作ること」も大切

だと思っています。

ゾーンに入ろうとするのではなく、

いつものルーティンをする。

呼吸を整える。

目の前の一球を見る。

そして身体を信じて投げる。

結果はその後です。

ボウリングで「練習では投げられるのに試合ではうまくいかない」と感じている人にとって、『ゾーンの入り方』はメンタルについて改めて考えるきっかけになる一冊だと思います。


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